みなさんこんにちは。
gardenの藤原です。
今回、ダイヤモンドの原産国で鉱山見学をするために、南アフリカにあるボツワナ共和国に行ってきました。
本日はそこで見たこと、学んだこと、感じたことを体験記としてご紹介させていただきます。
まず、なぜ今回「ボツワナ共和国」に行くことになったのか。
実はダイヤモンドが採れる場所、採取ができる会社は世界で数えるほどしかありません。
ダイヤモンドが原石として採取され、磨き上げられ、ジュエリーとなるまでにはいくつもの会社、職人の仕事を経てお客様の元へ届けられています。
そのダイヤモンドの原石を採取するための鉱山を持つ会社こそが「DTC(ダイヤモンド・トレーディング・カンパニー)」。そしてそのDTCが所有する世界5拠点の鉱山の中でも世界的に大きな鉱山があるのが南アフリカの「ボツワナ共和国」ということで、今回は、そんな最大規模の鉱山を見学させていただくことになりました。
DTCが所有する鉱山で採取した原石は、「サイトホルダー」と呼ばれる原石を買い付ける権利を持つ会社にしか買うことはできません。
下記は設立当初、サイトホルダーとしてDTCの取引契約があったサイトホルダー。
現在は定期的に行われる更新で、毎年顔ぶれは変わっているようです。
そのほとんどがダイヤモンドの研磨技術を持ち、ボツワナ共和国にあるDTCの敷地周辺に自社工場を設立することで、原石買い付けから世界流通までのスピードをアップさせています。
実は、このサイトホルダーを敷地周辺へ移転させるという動きはボツワナ共和国政府がDTCへの要請で動き出したのがきっかけと言われています。ボツワナ共和国をはじめとする南アフリカでは政府が積極的にダイヤモンドビジネスに加わっているということで、それほどまでにダイヤモンドビジネスが国の大きな資財源となっている様子がうかがえます。
それもそのはず、1つのサイトホルダーが所有する研磨工場で働く従業員は約3,500人。それが20社前後あるわけですから、鉱山周辺に及ぼす経済効果はすごいもの。
そして何より、後でご紹介する「デブスワナ社」はボツワナ共和国のGDP(国内総生産)の33%、外資獲得80%以上を占めているわけですから、ボツワナ共和国はデブスワナ社で成り立っているといっても過言ではありません。
国を挙げて取り組まれているダイヤモンドビジネスと、それが及ぼす経済発展効果の現状をこの目に焼き付けるためにエボラ出血熱の影響で不安が多い中の渡航ではありましたが、行って参りました!
まずは出発初日。行き慣れた関西空港から1時間のフライトで羽田空港へ向かいます。
関西空港ではお気に入りのラーメン店「龍旗信」で朝ラーメンを堪能して、いざ出発です。
羽田空港に到着すると、次のフライトまでの待ち時間中に空港内でだし茶漬けを頂きました。
ここから徐々にフライト時間が長くなるので、その前の腹ごしらえです。
羽田からまずはシンガポールへ。フライト時間は6時間。そこからシンガポールの空港内乗り継ぎのため2時間滞在した後、11時間かけて南アフリカにあるヨハネスブルグの空港へ向かいます。
ヨハネスブルグに到着すると、空港内にはアフリカっぽいお土産類を並べたお店が並んでおり、少しテンションもあがってきました。
そこで3時間、乗り継ぎの為の滞在ののち、ボツワナ航空へ向かいます。
ここからはジャンボジェットではなく、中型のプロペラ機に。乗車時間は1時間です。人生初のプロペラ機でしたが、機内食付きというおもてなしに感激です。
ボツワナ航空からボツワナ共和国の首都「ハボローネ」に到着。
ここからは、今回の旅中運転手としてお世話になる女性ドライバーの運転でまずはホテルへ。
途中、ご飯を食べるのに街のショッピングモールに寄りました。
日本のショッピングモールのような作りになっており、とても快適です。
入ったレストランにはなんと、日本の「キッコーマン醤油」が!ワールドワイドな日本の食品産業に感激です。
ホテルへ移動してこの日は終了。
明日からの鉱山見学に備えて、長時間移動の疲れを癒すべく、この日は早めに就寝しました。
滞在中お世話になった「ランスモアホテル」は四つ星ホテルとして有名なホテルなのですが、
南アフリカのイメージとは違う、高級感のあるホテルで、滞在中はとても快適に過ごすことができました。
今日から鉱山と研磨工場の見学です。
この日も朝からドライバーさんにお世話になり、ホテルから車で2時間ほどの所にあるジュワネング鉱山へ向かいます。
ジュワネング鉱山はDTCボツワナが所有する4つの鉱山(オラパ(Orapa)鉱山とこのジュワネング(Jwaneng)、レタカネ(Lethakane)、ダムツァ(Damtshaa))の中でも現在最も高品質な宝飾品用のダイヤモンドが採取されるといわれており、それまで高品質だと言われていたロシア産やカナダ産にも勝る品質だと言われているそうです。
車中から見える景色も少しずつ鉱山の広い敷地を望む拓けた景色となってきました。
ボツワナ共和国の中でもハボローネ周辺は年に1〜2回ほどしか雨が降らない土地柄、元々川のあった場所も干上がり、このような状態になっています。
雨が降らない土地なので、移動中はずっと乾いた砂利道が続きます。
途中、野生の動物の姿も所々に見え、南アフリカらしい景色に感激していました。
そうこうしているうちに、ジュワネング鉱山があるDTCの敷地に到着しました。
ここからは厳重なセキュリティーに守られたDTCのダイヤモンドヴィレッジです。
まず、到着して最初に訪れたのはデビスワナ社内。
ここで、私たちのような見学に訪れた業者やトレーダー向けに、まずはDTCとダイヤモンド、鉱山についての詳しい説明を受けます。
もちろん、すべて英語。直接理解はできませんでしたが、頂いた冊子やプロジェクターを使った丁寧な説明で、なんとなくではありますが、DTCと国との密接な関係や鉱山の歴史など、その偉大さをお勉強させていただきました。
そして最後に配られた安全に見学するためのヘルメットやベストを身に着けて、いよいよ鉱山に突入です!
残念ながら、鉱山内では最新の採掘技術を使って作業が行われており、その技術の漏洩防止のため写真撮影は禁止とのこと。関係者の方に頂いた写真データになりますがご紹介します。
見学したのは深さ380メートルほどの場所。
広大な鉱山を見渡しながら、どこでどんな作業が行われているかの説明を受けました。
採掘場は大きく分けて3つのセクターに分かれており、第1・2セクターで原石が混じっている岩を砕いていきます。
そして砕いた岩をダイヤの原石が入った石と入っていないただの岩とに分別していくのが第3セクターだそうです。毎日大量の岩を採掘するこの鉱山でも1日に採掘できるダイヤモンドはほんのわずか。
それだけダイヤモンドを採掘するのは難しく、さらにいかにダイヤモンドが貴重で価値のあるものかが分かります。
ここで採掘されるダイヤモンドが世界最高品質を誇ると言われており、その産出量は年間約1400万カラット。そのうち宝石品質の産出が最も多いというところがこの鉱山の特徴で、取引額は年間10億ドルに上るそうです。
鉱山では重機の説明などもしていただき、この広大な敷地内では300トンの岩石が運べる重機を数百台以上使って作業しています。ご覧の通り、タイヤだけ見ても人間の何十倍もあります。しかも、すばらしいことに、この中の重機には日本の「コマツ」というトラックメーカーのものがほとんどで、日本の技術のすばらしさを感じました。
大型重機さえもちっぽけに見えるこの広大な採掘場で採掘されるダイヤモンド、そしてその取引額。それを考えると、本当に世界のダイヤモンドビジネスの大きさを実感します。
そうして30年間、毎日採取される岩を少しずつ積んでいくことで、写真のような岩山となったそうです。
この岩山の大きさが、まるで、ボツワナ共和国のダイヤモンドビジネスの歴史を物語っているように思います。
移動中にも見えるこの岩山は、もはや自然の一部と化しています。
そして、2日目の鉱山見学が終了。
次の日は敷地内に構えるサイトホルダーの研磨技術を見学させていただけることに。
今回の旅で「プルチェニック」「DTC」「ブルースター」3社を見学させていただいたのですが、
鉱山で採掘された原石はいったんDTCボツワナの会社に集められます。
写真はDTCボツワナの社内。敷地に入るところから整備された環境、厳重なセキュリティーに守られたとても快適な場所といった印象です。
そこでサイトホルダーと呼ばれる各会社への受け渡しが行われるのですが、
まず、下の写真のように、鉱山から採取されたダイヤモンドの原石を品質・大きさなどで選別を行い、
受け渡し用の袋に分けられます。
そこから世界で原石取引を許された選ばれし会社『サイトホルダー』へ受け渡しが行われます。下の写真はその受け渡し場所となる部屋なのですが、部屋の中や受け渡し方法は極秘です。
この番号が書かれた部屋にサイトホルダーが集められ、原石の受け渡しが行われるそうなのですが、この部屋に入ることが許されているのはサイトホルダーのみ。部屋の中が気になるところですが、残念ながら見ることはできませんでした。
最後に会社を仕切る副社長とマクドナルド氏と一緒に記念撮影をさせていただきました。
3.でご紹介したサイトホルダーの受け渡しを経て、各サイトホルダーの研磨工場へ移された原石はいよいよ研磨作業に入ります。
ここからはダイヤモンドが原石から宝飾品用の形になるまでの作業工程をご紹介します。
まずはじめに、鉱山から採掘された岩石からダイヤモンドを削り出して、そしてその大きさ、品質により選別されたダイヤモンドがサイトホルダーたちの手に渡ります。
ここからが研磨技術をもつサイトホルダーたちの出番。
サイトホルダーの手に渡ったダイヤモンドはまず、「プランニングデパート」と呼ばれるデザイン室に集められ、それぞれのダイヤモンドが最終的にどのような形にカットするかを協議されます。この時点ですでにダイヤモンドの価格が決定されている訳ですから、いかに無駄なく、原石を最も有効的なデザインに仕上げるか。それにより原石の仕入れ値に対してのサイトホルダーが獲得できる利益額が変わってしまう訳ですから、最も判断に時間と決断を要する会議と言っても過言でないでしょう。
この作業もすべて今では機械で行われ、レーザー照射ダイヤモンド原石をレントゲンのように3D画像としてコンピューターに映し出します。そこから機械が数パターンのカッティングプロポーションを提案してくれるので、そのパターンの中ら、技術者が最終的にどのカッティングを施すかを判断するのです。CG上で最適な形を機械が導き出すので、かなり精緻な提案が行われます。現在の機械技術の進歩は目紛しく、CG画面の立体図でどこにどのような内包物(インクリュージョン)があるかまで正確に把握することができます。この機械がなかった以前に比べて原石のロスを最小限に抑えて、効率よく研磨できるようになっているものの、最終的に最も美しく輝く最適な形をより多くとる方法を見極める。それがこのプランニングデパートで必要とされる職人技です。
協議により決定されたカッティングシルエットに削り出すため、次に「ソーイング」というテーブルファセットを削り出す作業に入ります。
テーブルファセットと言われても、何のことだか分からない方が多いと思いますので、簡単にダイヤモンドの名称をご紹介します。
この画像のように、テーブルとはダイヤモンドの言わば頭上のような場所。
指輪としてアームに埋め込むと最も目にする場所を「テーブルファセット」といいます。
この平らな部分を少しずつ削り出していくのです。
テーブルが削りだせたら次にガードルを決めて正円を作る作業に入ります。テーブルとガードルを決定した瞬間に自動的に原石のセンターが算出されます。ダイヤモンドのカッティングプロポーションには様々な形がありますが、いずれの形を研磨していくにしても、基本となるのは「対称性」。つまり、左右がどれだけ精緻にシンメトリーとなっているかが美しさを決める要素となります。ガードルを決める際にセンターが決定できなければ、カットの対称性が失われ、肝心のダイヤモンド特有の虹色の輝きを均等に効率よく引き出すことができません。つまり、どれだけガードルの研磨がダイヤモンドの美しさを決めることになります。
ガードルとセンターが決まればキューレットの位置も自動的に決まるので、原石だったダイヤモンドも大まかに最終形が見えてきます。ここまでの作業は最新のプログラムで各ダイヤモンド原石にとって最適な形になるよう、計算された精緻なカットがオートマチックで進んでいきます。
人間が生み出した機械技術はすごいものです。
そして、ここからは人間の手で行う研磨技術が大切になってきます。
第一段階でパビリオン部分を研磨していきます。その際には、テーブル部分を仮止めで固定し、アンダーガードルと言われる部分から少しずつ研磨していきます。
敷地内に数社ある研磨工場のほとんどに研磨技術の腕を磨く為の学校が入っており、ここから行われる研磨作業も簡単な部分は技術を学ぶ生徒が授業として行うなど、次世代の職人育成にも力を入れているようです。
ダイヤモンドの研磨は一面一面セクションと担当者を決めて作業を行っています。ダイヤモンドが1つプロポーションを完成させるまでに、何人もの職人の手で大切に研磨されて完成しているのです。
ちなみにダイヤモンド研磨の全行程を1人で行える人のことを「ダイヤモンドマスターカッター」と呼ばれるそうです。ここまでの技術を習得して初めて最初の行程である「プランニングデパート」での判断をする役職につくようです。
パビリオンファセットの研磨の際に、特に注意しなければならないのは、面と面が接地する場所。この作業はそれぞれの面を丁寧に磨き込まなければならないため、最新の注意を払って研磨されています。
ご存知の通り、ダイヤモンドの大きさは様々ですが、小さいものは数ミリの世界ですから、硎磨作業にはかなりの集中力が要求されます。
ところで、「地球上で最も堅い物質はダイヤモンド」ということは有名な話ですが、そのダイヤモンドを研磨することができるのもダイヤモンドだけというのはご存知でしょうか。
ダイヤモンドの研磨に使われるのは宝石研磨専用に作られた「スカイフ」と呼ばれる電動研磨機。電動ロクロのように高速回転する銅の金属板に研磨用のダイヤモンドパウダー(研磨剤)とフラックス剤を塗り、そこにカットするダイヤモンドを押し当てていくことで少しずつ研磨されていきます。
ダイヤモンドパウダーとダイヤモンドの結晶の方向、堅さの異方性を利用してダイヤモンドを研磨していく訳ですが、ダイヤモンドを押し当てる際の摩擦熱は相当なもので、ダイヤモンドを焦がしてしまうことも。
それこそが職人技であり、熟練の経験と技を要するということです。
この行程を経てダイヤモンドの形となった原石はその品質・価値を見極められ、市場で取引するために専門の鑑定機関に出されます。その前に鑑定機関での鑑定レベルを事前に把握するため、ダイヤモンド一つずつの確認を行います。
ここである程度の品質と価値が決まるわけですから、会社の利益想定が分かるというわけです。
このような研磨工場での作業行程を2社、見学させていただきました。
日々ダイヤモンドを目にする機会は多い私ですが、実際に原石から宝飾品のダイヤになるまでの行程、現地の匂い、職人の技術を目の前で見るのは今回が初めてで、改めてダイヤモンドの価値を実感しました。
さて、2日間かけて鉱山と研磨工場の見学をさせていただきました。
とても有意義な時間だったのですが、せっかくアフリカまできた訳ですから、大自然で生きる本物の動物たちを見たい!ということで、公園や自然に生きる動物たちを見られる場所に案内していただきました。
公園内を自転車で回ることもできるようで、マウンテンバイクが用意されていました。
シマウマやキリン、サイなど、名前がわからない動物もたくさんいましたが、写真以上にすぐ近くにいる動物たちに終止興奮状態でした!
公園の他にも危険動物だけをある程度の管理区として分けた土地にも訪れました。
まあ、管理しているといっても日本のように厳重な警戒というわけではなく、あくまで自然に。
そこにはハイエナやライオンなどもいるそうで、今回はライオンを見ることはできませんでしたが、生のハイエナに会うことができました。
動物園でもハイエナはなかなか見ることがないので、初めましてでしたが、ガイドの方によるとハイエナが一番危険だそうです。
今回、鉱山と研磨工場を見学させていただき、改めてダイヤモンドの希少性を肌で実感し、自分が世界的にも貴重なダイヤモンドという存在に深く携わる仕事をしていることに、誇りを感じ、本当に良かったと感じました。
30年も前から掘り続けることで生まれた鉱山とそれを積み重ねた岩山の言葉にできない迫力、そしてボツワナ共和国の大自然の雄大さは、少々の悩みなど一瞬で吹き飛んでいきそうなほどの存在感。これは目の前で見た者にしか分からないかもしれませんが、そこで目にするもの、聞くこと、感じるものすべてに感動を覚えました。
そして、日本では考えられないかもしれませんが、世界にはダイヤモンドが教育や医療など、人々の生活を支える国の経済を担う存在にもなりうること、そういったビジネスモデルで支えられている国があるということも知り、本当に勉強になりました。
とにかく長いフライトと移動時間。たどり着くまでの苦労は決して容易なものではありませんでしたが、その分、学んだこと、感じたことは多く、少しですが世界を知った気がします。
なかなかこうゆう機会が頻繁にある訳ではないのですが、機会があればまた行きたいですし、もっといろんなことを知りたいと思いました。
自分が携わる仕事の根底を知るのはとても楽しいですね。
この経験を活かして、またより良いものをお客様に提供できるようにがんばらせていただきますので、今後ともグレースフジミ、gardenをどうぞよろしくお願いいたします!